年頭所感 代表理事 山崎秀子
2020年は新型コロナウイルス感染拡大で、社会の動きが一変した年でした。昨年を振り返ると、政府の緊急事態宣言において、大阪府が4/7~5/21まで対象地域となり、誰もが経験したことのない事態、子どもを取り巻く環境も厳しいものとなりました。
〇教育・保育では、大阪府内の幼稚園、小・中・高校が約2か月に渡り休校。大阪市認可の保育所は、開園を続けました。そして、大学も休校から、多くの大学でオンライン授業での再開となりました。
〇仕事・働き方が大きく変わりました。在宅勤務・テレワークへ移行した会社・自治体も多く、緊急事態宣言中は朝の満員電車がなくなりました。販売業や飲食業の休業に伴い、失業や自宅待機に伴う減収となった人も多くいます。
国や自治体から子どもに向けての説明はされないまま、学校が長期休みに。自宅学習が求められ「家庭が学校化」。そして、在宅勤務は「家庭が職場化」することになりました。子育て家庭には相当な負担がダブルで課せられることになりました。
マスク越しでの会話。人とふれあい、集まり、わいわい騒ぎ、笑いながらの子ども時代を避けなければならない状況は、子どもたちの育ちの中でどう影響するのかもわかりません。
「I’m speaking」(今は私が話しているんです)。アメリカ副大統領就任予定のカマラ・ハリス上院議員が、候補者として出た討論会で述べた言葉です。討論相手の副大統領に発言を何度もさえぎられても、こう言い続けました。怒りを示せば女性は感情的と言われ、冷静に対応すると女性らしさは、と求められる。「女性活躍」と日本政府はうたうが、実際は。日本では昨年後半、女性の自殺が増加。もともと家庭・職場で様々なケア役割を当たり前のように担わされている女性が、コロナ禍でさらに精神的負担が増加。非正規の働き方による経済的な打撃も大きいと言われます。メディアでも、学校教育、児童虐待、失業、貧困、孤立、子育て・家事の在り方、家庭観…について報道されるようになりました。新型コロナウイルス感染拡大によって社会に出てきた問題は、新たに起きたことではなく、もともと日本社会にあった“ひずみ”が噴出したにすぎません。これまで気に留めていなかった、気づいていなかった人たちが自分事として考えるようになり、また、見ざるをえなくなったのだと思います。
今年は、東日本大震災から10年。子ども情報研究センターが大阪市港区築港を離れ、HRCビル(港区波除)に入居して10年になります。震災から約1か月後のことでした。移転後いちばんに取り組んだことは防災。懐中電灯・電池が品切れの時期でした。そして、未曽有の災害で、子どもの権利が奪われているなか、子ども情報研究センターとして自分たちは何ができるのかを問われてきた10年だったと思います。そして、今も。
この間、会員のみなさん、入居するビルや地域のみなさん、子どもの権利でつながるみなさんに応援していただき、何とかやってこられたと実感しています。そして、各事業を共に担っている職員・スタッフが、不安な日々のなか踏ん張ってきてくれたこと、そのみんなの力を感じる1年でもありました。年明けも感染拡大により、今後の見通しも立たない情勢です。しかし、みなさんとつながり助けあい、世の中の「当たり前」を見直しながら、子どもの権利実現に向けて活動を続けます。どうか応援してください。今年もより一層のご参加・ご協力をお願いし、年頭のご挨拶とさせていただきます。
2021年1月5日 代表理事 山崎秀子