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  • 2019.11.14 マンスリーコラム #事務局

    乳幼児の子どもの権利

「人権保育教育連続講座」(10月23日)を終えて

今年の「人権保育教育連続講座」(後期)では、乳幼児期の子どもの権利について、平野裕二さん(子どもの権利条約総合研究所)のお話を聞かせていただく機会に恵まれました。子どもの権利条約に関しての研修はいくつか参加しましたが、乳幼児に関してのものは少なく、私にとっては初めてのことだったように思います。平野さんご自身も、どうしても12歳くらいから上の年齢を考えてのお話になることが多いとおっしゃっていたような気がします。

人は、生まれたときから権利の主体です。中には、人工中絶を認めるかどうかの観点で、胎児からの生きる権利を主張するグループもあるようですが、そこまでの合意にはいたらず、生まれたときからということになったようです。

国連「子どもの権利委員会」は、乳幼児期の特質を挙げていて、人間のライフスパンの中で最も急速な変化をする時期なので、子どもの発達しつつある能力に一致するやり方で、親(または親に準ずるもの)の関わり方も変わっていく必要があると言っています。特に私が関心を持ったのは、意見表明に関しての部分です。子どもの権利条約第12条で「子どもの意見の尊重」ということが言われていますが、ことばを話せない乳幼児の場合はどのように保障されればいいのでしょう。子どもの権利委員会は、態度でも泣き声でもよい、意見をまとめる力を有するかどうかでもない、と言っています。周りにいるおとなが、幼い子どもが表現する気持ちを理解することが大切だと言っているのです。

私は保育などの現場で乳幼児と接する機会をたくさん経験させていただきましたが、子どもたちは、いつだって、懸命に自己主張をしてくれました。手や目の動きから、気持ちを伝えてくれることがありました。泣いて訴えてくれることもありました。「あれがほしい」「あっちへ行きたい」「こっちへきてほしい」「じっとしているのはイヤ」「おなかがすいた」「おしっこ出たよ」等々。赤ちゃんがするさまざまな動きを想像してください。それらすべてが、赤ちゃんのことばだと思うと何だかワクワクしてきませんか。問われているのは、子どもの力ではなくて、おとなのそれらを受け止める力なのです。

医療現場では、さまざまな治療において、子どもたちの気持ちを受けとめ、ストレスの軽減を図る準備も必要であると言われています。例えば、子どもが手術をするときには、子どもがおびえなくても済むようにさまざまな工夫がなされなければなりません。こんな話を聞いたことがあります。ある2歳児が開腹手術をうけるとき、その子が大好きなキャラクターの人形を使って、麻酔のこと、手術のことを怖がらないように伝えたそうです。子どもは安心して、手術日を迎えることができました。当日、手術室へ向かうエレベーターの中には、子どもの大好きなキャラクターの人形がところ狭しと置かれていたそうです。

私は、いろんな場所で子どもの権利が保障される社会になることを願い続けたいと思います。出会った子どもたちといろんな形で会話を楽しみたいと思います。

子ども情報研究センター 理事 

橋本 暢子

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