情報BOX~子ども・若者をめぐる動き【国際編】提供:平野裕二 2021年3月1日~5月31日

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  • 2021.06.22 情報BOX【国際編】 #事務局

    情報BOX~子ども・若者をめぐる動き【国際編】提供:平野裕二 2021年3月1日~5月31日

国連・地域機関・国際NGOなど

3/11 国連人権専門家、福島原発事故被災者の人権を守るための努力を強化するよう日本政府に要請。

東日本大震災・福島原発事故発生から10年を迎え、国連人権理事会から任命された5人の特別報告者(それぞれ有害物質、国内避難民、食料、健康、飲料水・衛生の問題を担当)が声明を発表。とくに(1)福島第一原発で発生している汚染水の処理の問題と(2)自主避難者を含む避難者の問題に言及し、いっそうの対応を求めた。

3/11 ユニセフ(国連児童基金)が、新型コロナの世界的パンデミック発生から1年後の世界の子どもたちの状況を報告。

学齢期の子ども1億6,800万人以上が約1年間にわたって学校に通えずにいること、開発途上国における子どもの貧困が約15%増加する見込みであることなど、厳しい状況が続いていることが明らかに。

3/24 EU(欧州連合)、「子どもの権利戦略」を策定。

EUの欧州委員会が「EU子どもの権利戦略」を採択。(1)子ども参加、(2)社会への包摂、(3)被害を受けずに安全でいられる、(4)子どもにやさしい司法、(5)デジタルワールド、(6)世界中の子どもたちを助けるという6分野を柱に位置づけ、EU内外の子どもの権利を増進しようとするもの。同日、困窮している子どもが主要なサービス(乳幼児期の教育・ケアを含む)に確実にアクセスできるようにするための「欧州子ども保障」制度の創設もあわせて提言した。

4/1 ユニセフが新型コロナと債務危機に関する報告書を発表。

世界の25か国(およそ8か国に1か国)で、政府の支出総額のうち債務サービスに費やした割合が教育・保健・社会保護を合わせた割合よりも高いことが明らかになった。世界の子どもの権利を守るため、債務負担の軽減などの取り組みを進めていくことの必要性を指摘。

4/8 欧州人権裁判所、チェコで子どもの予防接種が義務づけられていることは欧州人権条約違反ではないと判断。

子どもに予防接種を受けさせなかったことを理由として罰金を科されたり幼稚園への入園を拒否されたりした親が提訴したもの。裁判所は、チェコの政策は健康および他者の権利を保護するという正当な目的を追求するものであり、接種拒否への対応も行き過ぎたものではないと認定した。

4/19 国連人権専門家が、大学生等を対象とする日本の「学生支援緊急給付金」について懸念を表明していたことが明らかに。

4人の特別報告書から2月19日付で送付されていた共同書簡に日本政府が回答したことを受けて、指摘の内容が公表された。留学生に対して成績優秀条件などの追加的基準を課していること、朝鮮大学校などの非1条校に通う学生が支給対象から除外されていることなどが社会権規約や人種差別撤廃条約に違反している可能性を指摘されたが、日本政府は問題ないとしている。

4/30 国連・移住労働者権利委員会、移住者の恣意的拘禁の禁止に関する一般的意見5号を採択。

移住者(在留資格がない外国人を含む)のいかなる拘禁・収容も、最後の手段としての例外的措置として位置づけられなければならないことを強調した。とくに、子どもの収容は原則として行なってはならないことも指摘されている。

5/10 ユニセフ事務局長、新型コロナが子ども・若者のメンタルヘルスに及ぼしている影響について懸念を表明。

メンタルヘルスの悪化にもかかわらず必要な支援を受けられていない子ども・若者が多数にのぼるとして、取り組み強化の必要性を訴えた。

5/17 国連・子どもの権利委員会、第87会期の初日に大谷美紀子さんを委員長に選出。

委員長の任期は2年。今会期はオンラインで開催され、ルクセンブルクとチュニジアの報告書審査もオンラインで行なわれた。

5/20 チャイルド・ヘルプライン・インターナショナルが「行動の呼びかけ」を発表。

新型コロナが世界の子ども・若者およびチャイルド・ヘルプラインの活動に与えた影響に関する報告書(5/17日発表)も踏まえ、すべての子どもがヘルプラインに無償で制限なくアクセスできるようにすること、子どもの保護のための制度や行動計画にヘルプラインを統合することなどを求めた。

各国動向

3/4 アルゼンチン、移住者の退去強制を容易にしていた政令を廃止。

国連の移住労働者権利委員会や子どもの権利委員会などから、家族統合に対する権利や子どもの最善の利益の原則などの侵害・違反であるなどとして批判されていた。

3/5 ドイツで改正青少年保護法が成立。

とくに、デジタル化によって新たに生じるようになったさまざまなリスクへの対処をオンラインサービス事業者に対して義務づけるとともに、デジタル環境における子ども・若者の保護および参加を促進しようとするもの。5月1日施行。法律の遵守状況の監視等を担う「連邦子ども・青少年メディア保護センター」には、子ども・若者の代表も含む助言委員会が設けられる。

3/7 ニュージーランドの子どもの権利グループ、新型コロナと子どもの権利に関する報告書を発表

ニュージーランド子どもコミッショナー事務所が主宰する「子ども条約モニタリンググループ」がまとめたもので、「子ども・若者ウェルビーイング戦略」(2019年8月)に掲げられた6つの成果指標に照らしてこの間の状況を検討し、政府機関等に対して計31項目の勧告を行なった。

3/16 スコットランド(英国)で「国連・子どもの権利条約(編入)(スコットランド)法」が可決される。

子どもの権利条約を国内法化する法律で、▽条約上の要件と両立する形で行動する公的機関の義務、▽子どもの権利計画の策定、▽「子どもの権利・ウェルビーイング影響評価」の実施などについて定めている。遅くとも2022年の早い段階で施行される見込み。

3/30 米国・国務省が2020年版人権報告書を発表。

日本に関する章では、児童虐待(教員による子どもの性的虐待を含む)や子どもの性的搾取のほか、新たにスポーツにおける体罰の問題も、日本語の taibatsu という言葉を用いながら取り上げられた。

4/22 ドイツが子ども・青少年福祉の改革を目的とする「子ども・青少年エンパワーメント法」を制定。

「子ども・青少年をストレスフルな生活環境からよりよく保護し、彼らが参加の機会をより多く持てるようにする」ことがその主な目的。地方オンブズマンの設置も法定化した。

4/29 ドイツ憲法裁判所、気候変動対策が不十分であることを理由として気候保護法(2019年)を一部違憲と判断。

9人の若者による提訴を受けたもの。判決直後の5月5日、ドイツ政府はCO2削減目標の引き上げを発表した。

5/12 英国政府が「オンライン安全法案」を発表。

とくに (a) 違法なコンテンツ(子どもの性的搾取・虐待に関わる犯罪を含む)、(b) 子どもにとって有害なコンテンツ、(c) 成人にとって有害なコンテンツへの対応を主眼として、ソーシャルメディアを含むオンラインサービス事業者に対し、リスク評価を含むさまざまな注意義務(配慮義務)を課すもの。子どもが利用する可能性のあるサービスについては定期的に「子どもリスク評価」を実施する義務が課され、安全配慮義務の履行が求められる。今後数か月内に議会に提出される見込み。

5/20 スペインで暴力からの子どもの包括的保護に関する法律が成立。

子どもに対する暴力の防止・発見、子どもの保護、このような暴力に関する意識啓発のためのさまざまな措置について定めたもので、未成年者を対象とする性的虐待犯罪について公訴時効期間の開始年齢を被害者が35歳に達した時点に延長するなど、暴力被害者に対する保護を強化した。

5/20 米国で「COVID-19ヘイトクライム法」が成立。

新型コロナの感染拡大にともない、とくにアジア系・太平洋諸国系の人々に対するヘイトクライム(差別的動機による犯罪)が増加していたことを踏まえ、対応を強化するもの。

5/27 オーストラリア連邦裁、環境大臣には子どもたちを気候危機から保護する注意義務があると認定。

13~17歳(提訴当時)の子ども8人が中心となって提起した、炭鉱拡張計画の差止めを求める集団訴訟で言い渡されたもの。環境大臣の注意義務違反が十分に立証されていないとして、差止めそのものは認められなかった。

(平野裕二/ARCAction for the Rights of Children=代表)

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