情報BOX~子ども・若者をめぐる動き【国際編】提供:平野裕二 2021年6月1日~8月31日
6/4 国連・子どもの権利委員会が次の一般的意見のテーマを決定。
これまで25件の一般的意見を採択してきた国連・子どもの権利委員会は、第87会期を終えるにあたり、次の一般的意見(26号)のテーマを「子どもの権利と環境(とくに気候変動に焦点を当てて)」に決定したと発表。同日、51人以上の国連人権専門家も翌日の世界環境デー(6月5日)に向けた共同声明を発表した。
6/10 新型コロナ禍で児童労働が増加に転じていることが判明。
6月12日の「児童労働反対世界デー」を前にILO(国際労働機関)とユニセフ(国連児童基金)が発表した共同報告書で、児童労働に従事する子どもの人数が20年ぶりに増加したことが判明。このような動向を踏まえ、国連・子どもの権利委員会とILOは児童労働反対週間(6月10日~18日)の最終日に共同声明を発表し、子どもの権利を中心に据えた緊急の行動を呼びかけた。
6/13 G7諸国、共同宣言で女子教育やオンラインにおける子どもの保護に取り組む決意を表明。
6月11日から英国・コーンウォールで開催されたG7首脳会合(G7サミット)は、最終日に合意した共同宣言で「ジェンダーの公平・平等の推進」の重要性を認識し、とくに女子教育、女性のエンパワーメント、女性・女児に対する暴力の終焉(しゅうえん)に言及した。また、子どもや女性・女児をオンラインでもオフラインでも同様に保護する決意も表明。
6/15 WHO、「電子ゴミ」が子どもや女性の健康に与える影響についての報告書を発表。
WHO(世界保健機関)が、パソコンや携帯端末など電子機器のゴミである電子廃棄物が子どもや女性の健康に与える影響を調べた報告書を発表。世界中で1,800万人超の子ども・若者と1,300万人近くの女性が処理施設などで有害物質にさらされていると指摘し、対応を促した。
6/18 産休・育休制度や保育の状況の国際ランキングで日本が21位に。
ユニセフは、高所得国41か国の産休・育休制度や保育の状況を比較した報告書を発表。日本は充実した育児休業制度について1位の評価を与えられたものの、就学前教育・保育への参加率、保育の質、保育費の手頃さなどを踏まえた総合順位では21位に留まった。
6/25 ILO・暴力およびハラスメント条約が発効。
ILO「仕事の世界における暴力およびハラスメントの撤廃に関する条約」(2019年、第190号条約)が、発効のために必要な6か国の批准を得て国際的に発効した。日本は未批准。
6/25 ユニセフ・WHOなどが親・養育者支援のための国際的行動を呼びかけ
ユニセフやWHOなど5つの国際機関などが『親のためのグローバルサポート:機関間ビジョン』と題する枠組み文書を発表。親のエンパワーメントの視点も強調しながら、親・養育者支援のための国際的行動を呼びかけた。
7/1 ユニセフとWHOが「水と衛生」に関する最新の報告書を発表。
ユニセフとWHOが発表した報告書『家庭の水と衛生の前進2000-2020』で、依然として世界の3割の人々が自宅で石けんと水を使って手を洗うことができないことなどが判明。水・トイレ・手洗い設備の普及を加速させることの必要性が明らかになった。
7/1 OECD、子どものウェルビーイング把握のための新たな枠組みを発表。
OECD(経済協力開発機構)の「ウェルビーイング・包摂・持続可能性・機会均等センター」(WISE)が「子どものウェルビーイングおよび子ども政策にとって重要な要素の測定」と題する報告書を発表。▽子どもたちは、必要としているものを手にしているか、▽子どもたちは、安全・安心で、尊重・包摂されており、幸福だと感じているかなど4つの視点に立って現状を分析したもの。
7/1 世界で乳幼児の4人に1人は出生登録が行われていないことが判明。
ユニセフとUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が発表した報告書で、女性に対する差別的な法制などのために子どもの出生登録が妨げられ、世界で2億3,700万人の5歳未満児が出生証明書を持っていないと推定されることが判明。
7/30 IOM事務局長らが子どもの人身取引に関する共同声明を発表。
IOM(国際移住機関)事務局長と子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表が「人身取引反対世界デー」にあたって共同声明を発表。子どもの人身取引件数が過去15年間で3倍になっていることなどを踏まえ、対策の強化・継続を呼びかけた。
8/23 国連人権専門家がLGBTの保護状況について日本政府に照会。
国連人権専門家が、性的指向やジェンダーアイデンティティに基づく差別からLGBTを保護するための法律が存在しないことについて照会する共同書簡を日本政府に対して送付。日本における最近の立法関連の動向、子どもの権利委員会を含む国連人権条約機関からの勧告などを参照しながら、日本政府の認識や取り組みを質している。
8/30 WHOとユニセフの欧州事務所が学校再開と安全確保措置の強化を呼びかけ。
欧州諸国で9月から新しい学年が始まるにあたり、WHOとユニセフの欧州地域事務所が、新型コロナウイルスのデルタ株が主流となるなかでも安全確保措置を強化しながら学校を開き続けることを呼びかけた。WHO欧州専門諮問グループが6月末にとりまとめた学校関連のガイダンスの活用も促している。
6/6 カナダ、先住民族「寄宿学校」での遺骨発見事件について国連から徹底的調査を要求される。
ブリティッシュコロンビア州に設けられていた「インディアン寄宿学校」跡地で215人の子どもの遺骨が発見された事件をめぐり、国連の人権専門家9人が徹底的調査と賠償を求める声明を発表。このような学校を運営していたカトリック教会の責任もあわせて問われた。
6/10 英国の学校評価機関、学校における性暴力についてさらなる対策を勧告。
英国のOfsted(オフステッド:教育水準監査院)が、900人以上の生徒の証言を踏まえて作成した、学校における性暴力についての報告書を発表。セクシュアルハラスメントなどの性暴力が依然としてあたりまえのように行われていることを指摘し、対応の強化を促した。
6/21 バチカン、聖職者による子どもの性的虐待へのさらなる取り組みを国連から促される。
国連人権専門家4人がバチカンに対して共同書簡を送り、カトリック教会の聖職者による子どもの性的虐待の再発防止および被害者への賠償などの取り組みを強化するよう促していたことが判明。フランシスコ教皇による教会法典の改正(聖職者などによる子どもの性的虐待への対応の厳格化)を歓迎しつつ、犯罪の通報の義務化などを求めた。
6/23 ハンガリーの「反LGBT法」に対してEUなどから強い批判の声。
ハンガリーで6月15日に成立した「反LGBT法」(学校・テレビ・広告において多様なジェンダーアイデンティティや性的指向について描写・議論することを禁止する複数の法律の改正)について、EU欧州委員長が強い批判を表明し、法的措置をとる可能性も示唆。欧州各国の首脳からも懸念が表明されている。
7/8 韓国国家人権委員会、新型コロナ支援政策から外国籍児童を除外することは差別と指摘。
新型コロナ禍にともなう子育て費用負担緩和のための特別支援金の支給対象から外国籍の未就学児童が除外されたことについて「合理的理由のない差別」と指摘し、保健福祉部(厚労省)長官に対して是正を求めた。
7/13 欧州評議会人権コミッショナーがドイツに子どもの権利保障の強化を要請
子どもの権利を明記するための憲法(基本法)改正が頓挫したことなどを踏まえ、欧州評議会人権コミッショナーがドイツ政府に対し、憲法で国連・子どもの権利条約と同等の保障が定められることを確保するよう要請。ドイツ政府は反論したが、将来的な憲法改正の可能性も示唆した。
7/16 ミャンマーの状況について国連・子どもの権利委員会が懸念を表明。
ミャンマー軍政下で続いている子どもの人権侵害について、国連・子どもの権利委員会が強い懸念を表明。平和的解決のために即時的行動を起こすよう国際社会に呼びかけるとともに、ミャンマーに対し、子どもの権利条約上の義務を最大限に履行し続けるよう促した。
7/21 英国政府、女性と女子に対する暴力に対処するための新たな戦略を発表。
英国内務省が、7月21日、女性と女子に対する暴力に対処するための新たな戦略を発表。16歳以上の女性から寄せられた18万件を超える意見を踏まえたもの。
7/23 米司法省、長髪禁止校則の違法性をめぐる訴訟で原告を支持。
米・司法省は、黒人の男子高校生に長髪を認めない規則は差別だとして生徒2人の親が起こした訴訟で、原告の見解を支持する意見書を提出。人種や性別に基づく差別に該当する髪型規制の有効性を認めない立場を明らかにした。
8/11 カナダ政府が初の若者白書を発表。
「カナダ若者政策」(2019年5月)に基づく初の白書で、カナダ全土の若者(13~36歳)1,000人近くとの協議のうえで作成されたもの。白書の表紙には「若者のために、若者とともに、若者によって」と掲げられている。今後、4年ごとに作成される予定。
8/30 アフガニスタン情勢について国連・子どもの権利委員会などが懸念を表明。
国連人権理事会が8月24日の特別会合で女性、子ども、民族的・宗教的その他のマイノリティをはじめとするすべての人の人権を尊重することなどを呼びかける決議を採択したのに続き、国連・子どもの権利委員会と女性差別撤廃委員会も、女性および子どもの生命の保護および人権の尊重のための措置をとるようタリバンと他のすべての当事者に対して求める共同声明を発表。