情報BOX~子ども・若者をめぐる動き【国際編】提供:平野裕二 2025年6月1日~8月31日
6/11 ILO(国際労働機関)とユニセフ(国連児童基金)、世界の児童労働の状況に関する新たな報告書を発表。
改善の傾向は見られるものの、依然として世界で1億3,800万人の子どもが児童労働に従事しており、質の高い教育の保障をはじめとする取り組みの継続を訴えた。
6/12 世界のNGO(32団体)が国連人権条約機関の財政危機への対応を各国に要求。
人権条約に基づいて設置されている各委員会(子どもの権利委員会を含む)の会期がキャンセルされるなど、国連の財政危機が深刻化していることを踏まえたもの。国連分担金を全額かつ期日通りに支払うことなどの対応を国連加盟国に求めた。
6/12 紛争下での子どもへの人道アクセスの否定に関する指針を国連が発表。
人道サービス・援助に子どもがアクセスすることの制限・妨害・干渉をはじめとする「人道アクセスの否定」に関するモニタリングや働きかけのツールとして、子どもと武力紛争に関する国連事務総長特別代表事務所がユニセフなどと協力して作成したもの。
6/16 欧州評議会人権コミッショナー、移民の人権保障を訴える声明を発表。
「移民の人権への攻撃は私たちのすべての権利を危険にさらす」と題するもので、欧州諸国における最近の排外主義的動向に警鐘を鳴らした。
6/17 国連事務総長、国連総会と安保理に子どもと武力紛争に関する年次報告書を提出。
イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への攻撃の急増もあり、紛争下の子どもの重大な人権侵害が過去約30年で最悪の水準に達したことを明らかにした。
6/17 EU(欧州連語)の欧州議会(EU)、CSAM(子どもの性的虐待表現物)との闘いのために生成AIの規制を提案。
CSAMと闘うための方策について規定する、法的拘束力のある「指令」案の修正案として可決されたもの。生成AIによるものを含む写実的CSAM画像のほか、こうした画像生成のためのツール、こうした犯罪を容易にするマニュアルなどの規制も提案。
6/24 欧州評議会、「子どもにやさしい司法」に関するアセスメントツールを発表。
2010年に採択された「子どもにやさしい司法に関する指針」の実施状況を各国が自己評価するためのもの。制度の確立・整備から実践(子ども参加の保障を含む)に至るまでのさまざまな側面について、評価のための基準が示されている。
7/1 ランサローテ条約締約国、子どもの性的搾取・性的虐待との闘いに関する宣言を採択。
欧州評議会「性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する条約」の発効15周年を記念してマルタで開催された閣僚会合でとりまとめられたもの。世界中の国による条約への加入促進を含む、27項目の行動を掲げた。
7/4 国連・女性差別撤廃委員会、テクノロジーを利用した女性への暴力に関する見解(ポジションペーパー)を発表。
サイバーハラスメント(ネットいじめやリベンジポルノを含む)、プライバシー侵害、暴力の脅迫、子どもの性的搾取・性的虐待など幅広い問題を取り上げ、確固たる法律上・規制上の基盤の確立をはじめとする対応を促したもの。
7/7 国連人権理事会、教育に対する権利についての決議を採択。
教育における安全の権利を含め、教育を受けるすべての人(人道的危機・災害・紛争・占領の状況にある子どもを含む)の権利を完全に実現すること、個人通報制度を設けた社会権規約・子どもの権利条約の選択議定書の批准を検討することなどを各国に求めた。
7/9 欧州人権裁判所、ロシアによるウクライナでの多数の重大な人権侵害を認定。
ウクライナとオランダが提起した国家間訴訟における判決。2014年5月にウクライナ東部で始まり、2022年2月の全面侵略後にエスカレートした紛争において多数の重大な人権侵害が行なわれたとして、民間人の釈放・送還を含む対応を命じた。
7/23 国際司法裁判所(ICJ)、各国には気候変動対策をとる国際法上の義務があるとする勧告的意見を発表。
国際人権法に基づき、気候システム等の保護のために必要な措置をとることによって「人権を尊重しかつその効果的享受を確保する義務」があることも指摘。
7/28 国連機関、世界の食料安全保障に関する新たな報告書を発表。
WFP(世界食糧計画)やユニセフなど5つの国連機関が共同で作成したもの。2024年に飢餓を経験した人々の割合は世界人口の約8.2%(約6億7,300万人)で、全体としてはやや減少したものの、アフリカと西アジア(中東)では増加していることが判明。
8/7 欧州諸国の子どもオンブズパーソン/コミッショナー、パレスチナ・ガザ地区の子どもたちの権利の保護・回復を求める緊急声明を発表。
「ガザの子どもたちはこれ以上待てない」として、あらゆる必要な手段を尽くして子どもたちを保護することをすべての関係者に求めた。
8/11 WHO(世界保健機関)、子どもの体罰の公衆衛生上の影響に関する報告書を発表。
体罰の蔓延度、悪影響およびリスク要因・保護要因について体系的にまとめた、WHOとしては初の本格的報告書。
8/13 国連・女性差別撤廃委員会、家庭生活における女性と少女の権利の保護に関するガイダンス文書を発表。
委員会内に設けられた作業部会がとりまとめたもので、家族の多様なあり方を前提とした上で、実質的ジェンダー平等の確保および女性と少女の尊厳の保護のために各国がとるべき措置のあり方を示した。
8/22 パレスチナ・ガザ地区で「飢饉」の発生が確認される。
国連が行なっている統合食料安全保障段階分類(IPC)によるもの。9月末までにガザ地区全体で64万人を超える人々がIPCフェーズ5(飢饉)に直面するおそれがあると発表された。
8/28 国連人権専門家、人権と平等の増進におけるジェンダーの中心的役割を再確認する共同声明を発表。
ジェンダーの視点を後退させ、固定化された性別二元論を再強化しようとする一部の国々・勢力の動きに深い懸念を表明し、性別に基づく差別と並んでジェンダーに基づく差別にも対処していかなければならないと強調した。
6/4 ウェールズ(英国)で「すべての子どものための法律」案が発表される。
多数の民間団体の支持を得て超党派議員グループがとりまとめを進めてきた法案で、国連・子どもの権利条約をウェールズ法に全面的に編入することなどを目的としたもの。
6/17 英国政府、選挙権年齢を全国で18歳から16歳に引き下げる方針を発表。
2029年の総選挙から適用される見通し。前日の16日には、英国で若者支援やシティズンシップ教育に取り組んでいる40団体が『16歳での投票へのロードマップ』を発表し、これが英国の民主主義の変革につながるようにするための16の提言を行なった。
6/11 英国の民間委員会、子どもの遊びに関する最終報告書を発表。
2024年6月に設立された「国を育てる・遊び委員会」によるもの。新たな省庁横断的「イングランド国家遊び戦略」の策定をはじめとする10項目の提言を行なった。
6/13 アイルランド政府、ティーンエイジャー向けの居場所づくりへの助成結果を発表。
「ティーンエイジャーとともに進める、ティーンエイジャーのための空間づくり」と題するパイロットプロジェクト。各行政区の子ども評議会との連携などを条件とした上で、7自治体に計50万ユーロ(約8,300万円)を助成することが決定された。
6/16 スコットランド(英国)の子ども・若者コミッショナー、社会的養護当事者である子どもの教育に関する報告書を発表。
3月末に発表した、教育の中心に子どもの権利を位置づけるよう求めた報告書に続くもの。社会的養護当事者が直面している教育上の課題を明らかにし、対応を訴えている。
7/2 オーストラリアの連邦子どもコミッショナー、保育現場における安全強化のための緊急の行動を政府に要求。
ビクトリア州で発覚した保育士による乳幼児への性的虐待事件を受けたもので、コストを理由に子どもたちの安全をこれ以上危険にさらすことはできないなどと強調。
7/15 英国教育省、ミソジニー(女性蔑視・嫌悪)防止などを目的とするカリキュラム指針の改訂を発表。
関係性・性・健康教育に関する指針を改訂するもので、男子がポジティブなロールモデルを見つけ出せるようにすることなども打ち出している。2026年9月1日から適用。