情報BOX~子ども・若者をめぐる動き【国際編】提供:平野裕二 2025年9月1日~11月30日

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  • 2025.12.22 情報BOX【国際編】 #はらっぱ #PICKUP

    情報BOX~子ども・若者をめぐる動き【国際編】提供:平野裕二 2025年9月1日~11月30日

国連・地域機関・国際NGOなど

9/1 国連・子どもの権利条約の第4選択議定書(乳幼児期教育および無償の就学前教育・中等教育に対する権利)に関する政府間作業部会の第1会期が開催される。

 第1会期はスイスのジュネーブで9月3日まで開催され、選択議定書の作成に賛同する声が多数を占めた。日本政府は、新たな選択議定書の必要性の有無から議論すべきだとして、慎重な立場を表明。第2会期は2026年8月31日~9月4日に開催予定。

9/9 国連・子どもの権利委員会、イスラエルが子どもの飢餓を「戦争兵器」として利用していると非難。

 パレスチナ・ガザ地区における飢饉の発生を国連が正式に確認したことを踏まえたもの。ガザ地区への人道援助の妨害をやめるよう求めるとともに、イスラエル軍がガザへの攻撃を続けていることも強く非難した。

9/9 欧州人権裁判所、子どもの奪取・返還をめぐる手続で子どもの意見聴取の適切性について検討する国内当局の義務を確認。

 国際的な子の奪取・返還手続で、子どもの意見を確認することが適切かどうか検討しないままギリシャ当局が審査・決定を行なったことについて、欧州人権条約の違反を認定。その際、欧州評議会閣僚委員会が5月末に採択した「親の別離手続における子どもの権利および最善の利益の保護」についての勧告なども参照している。

9/10 ユニセフ(国連児童基金)、世界の子どもの栄養状況に関する報告書を発表。

 副題は「利益優先の食環境が子どもたちに与える悪影響」。5~19歳の低体重の割合が低下した一方、超加工食品やファストフードの影響で肥満の割合は3%から9.4%に増加していることなどを指摘。

10/3 欧州評議会議員会議、男性・男児に対する性暴力への対応強化を加盟国等に要請。

 男性・男児に対する性暴力が「現実だが隠された現象」であることを指摘し、加盟国やオブザーバー国(日本を含む)に、データ収集・調査研究、意識啓発その他の防止措置をはじめとする措置をとるよう促した。

10/7 欧州評議会閣僚委員会、「インターセックスである人の権利の平等」に関する加盟国への勧告を採択。

 インターセックスである人の人権について包括的に取り上げた初の国際法文書。

10/10 EU加盟国の多数が、子どものソーシャルメディア利用に関する「デジタル成人年齢」に関する検討を支持。

 一定の年齢(15~16歳)未満の子どもによるソーシャルメディア等の利用を禁止する方向で議論していく方針を盛りこんだ「ユトランド宣言」に、大多数のEU加盟国・提携国の大臣が署名。エストニアは、既存の規則の執行とデジタル時代に向けた教育の改善の必要性を指摘して署名せず。

10/11 国連・女性差別撤廃委員会と子どもの権利委員会が「国際ガールズデー」にあたり共同声明を発表。

 女性と少女の権利に対する世界的バックラッシュがこの間の成果を後退させかねないことに深い懸念を表明するとともに、今日の複合的なグローバル危機によって少女の人権の尊重・保護・実現がますます困難になりつつあることを指摘して、各国に対応を求めた。

10/15 欧州評議会のランサローテ委員会、信頼関係・権威・影響力を濫用した子どもの性的虐待に関する報告書を発表。

 このような性的虐待を禁じたランサローテ条約(性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する条約)18条の各国における実施状況を検証した結果、依然として適用対象をきわめて限定している国も存在するとして、法改正を含む対応の強化を促した。

10/16 国連・子どもの権利委員会、保護者のいない移住者の子どもの取扱いをめぐってフランスの「重大かつ組織的な」権利侵害を認定。

 通報手続に関する選択議定書の関連条項に基づき、委員会が調査を進めてきたもの。このような子どもの扱いについて、不適切な年齢鑑別およびその結果としての保護からの排除などを理由に「重大かつ組織的な」権利侵害を認定し、是正策を勧告した。

10/22 国際司法裁判所、パレスチナで国際人道法などを遵守するイスラエルの義務についての勧告的意見を発表。

「文民の飢餓を戦争手段として利用することの禁止を尊重する義務」を含む国際人道法上の義務、パレスチナ地域の住民の人権を尊重・保護・充足する国際人権法上の義務などの遵守をイスラエルに要求。

10/24 教育に対する権利に関する国連特別報告者、武力紛争時の教育の保障に関する報告書を国連総会で発表。

 報告書では、学校・大学などを攻撃や軍事利用から保護するための「学校保護宣言」(2015年、日本未賛同)も参照しつつ、「イデオロギー操作を防止し、かつ教育内容を保護する」ことを含む8つの「ポリシーアクション」を提示している。

11/7 国連・子どもの権利委員会、COP30に向けた声明を発表。

 11月10~17日にブラジルのベレンで開催されるCOP30(第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議)を前に、環境に関わる国際的意思決定においても子どもの権利条約を中心的考慮事項とすることなどを参加国に求めた。

11/18 欧州評議会、「子どもの性的搾取・性的虐待に反対する欧州デー」にあたり、エビデンスに基づく政策立案の重要性を強調。

 これに先立ち、ランサローテ委員会は、子どもの性的搾取・性的虐待に関するデータ収集機構のあり方に関する報告書を9月に発表している。

11/20 ユニセフ、「世界子供白書2025」発表を発表。

 国連・子どもの権利条約採択記念日でもある「世界子どもの日」に発表された今年の白書のテーマは「子どもの貧困に終止符を」。低・中所得国では4億人超(5人に1人)の子どもが貧困状態にあることを明らかにし、さらなる対応の必要性を強調。

11/25 「女性に対する暴力撤廃の国際デー」にあたり、国連人口基金(UNFPA)事務局長が声明を発表。

 同国際デーから始まる「ジェンダーに基づく暴力に反対する16日間の行動」のテーマが「すべての女性と女の子に対するデジタル暴力の根絶に向けて団結しよう」であることも踏まえ、「デジタル暴力を回避するために、少女をネットから遠ざけるのは解決策ではありません」などと強調。

11/26 ユニセフ、DVの影響に直面している子どもについての調査結果を発表。

 世界の子どもの4人に1人が、親密なパートナーから暴力を受けている母親とともに暮らしていることが明らかに。もっともリスクが高いのは、オセアニア(オーストラリアとニュージーランド除く)、サハラ以南アフリカ、中央・南アジアの子どもたちだった。

10/13 国連人権専門家、路上の状況にある子どもの性的搾取には「子ども中心の対応」が必要であると強調。

 子どもの売買・性的搾取・性的虐待に関する国連報告者が、今年の年次報告書を踏まえて国連総会で行なったプレゼンテーションで、「路上の状況にある子どもたちを守るためには、構造的原因と個々の脆弱性の双方に対処する、ホリスティックで権利を基盤とする、子ども中心の枠組みが必要」などと訴えた。

11/26 EU欧州議会、「「オンラインにおける未成年者の保護」に関する報告書を採択。

 ソーシャルメディアなどへのアクセスについて、標準的な利用開始可能年齢を16歳とする(13~15歳については保護者の同意を条件として容認)方向性を打ち出すとともに、アルゴリズムやゲームに関する子どもの保護措置の強化を企業に促すもの。

各国動向

9/5 スコットランド(英国)の慈善団体が「私の健康、私の権利」憲章を作成・発表。

「私の健康、私の権利」キャンペーンの一環として、チルドレンズ・ヘルス・スコットランドが9月5日に発表したもの。ポスター形式で10項目の権利を掲げている。

9/9 アイルランド子どもオンブズマン事務所、学校におけるスマートフォン等の一律禁止に反対する報告書を発表。

 若者助言委員会とともに作成した報告書で、学校でスマートフォン等を一律に禁止することは子どもの最善の利益に合致しないと指摘し、子どもの権利への影響や、個々の学校および児童生徒の多様性などを考慮しながら政策立案を進めるよう促した。

9/26 スイス議会、子どもの体罰を全面的に禁止する民法改正案を可決。

 民法302条を改正し、暴力に訴えることなく子どもを養育する親の義務を規定。あわせて、州(カントン)による子育て支援サービスの提供も義務づけている。7月に法改正を行なったチェコとあわせ、体罰全面禁止国は70か国となった。

11/26 オーストラリアの2人の若者、子どもを対象とするソーシャルメディア禁止法の施行差止めを求めて最高裁判所に提訴。

 16歳未満の子どもによるソーシャルメディアへのアクセスを禁じた連邦法の施行(12月10日)を前に、15歳の男女2名が連邦最高裁に施行差止めを求めた。同法は子どものコミュニケーションの自由を奪うもので違憲であるなどと主張している。

11/26 香港のNGOが「子どものセーフガーディング」に関する子どもアンケートの結果を発表。

 セーブ・ザ・チルドレン香港が、子どもに接する組織(スポーツクラブや学習塾を含む)における子どものセーフガーディング(安全確保/安心安全な組織・事業づくり)に関して子どもたちとともに実施した調査で、600人弱の子どもが回答した。

(平野裕二/ARCAction for the Rights of Children=代表)

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